製品概要

8K、4KなどUHDTVの最大の特長は、その空間解像度の高さであり、撮像システム(カメラ)の解像度特性が重要です。
空間解像度とは、カメラがどれだけ細かいところまで取り込んで表現できているかという能力を指しますが、空間解像度は画素数と同じではありません。
そこで、様々な空間周波数における応答の大きさを表した指標として、MTF(Modulation Transfer Function)があります。
MTFは、空間解像度特性の信頼できる指標として、カメラ、レンズの開発や撮影現場など、さまざまなシーンで活用することができます。
このたびアストロデザインでは、日本放送協会様の協力のもと、8KリアルタイムMTF測定装置IP-8030を開発しました。

システムイメージ図

特長

  • ●改良型Slanted-edge測定法によるリアルタイムMTF測定に対応
    •  ・ 目視での定性的な評価ではなく、定量的に高精度なMTF測定が可能
    •  ・ レンズのフォーカス、アイリス、ズームを制御しながらMTF測定が可能
    •  ・ 歪曲収差で曲がったエッジのMTF測定にも対応
  • ●多方向の同時測定に対応
    •  ・ レンズやカメラのイメージセンサの光学的な正対が確認可能
    •  ・ 画素配列や画像処理によるMTFの異方性が確認可能
    •  ・ 画像の中心と周辺のMTF測定値の比較が可能
  • ●従来のMTF測定法にも対応
    •  ・ バー(インメガサイクル)による測定法やISO 12233で規定されているs-SFR法にも対応
    •  ・ 従来の測定方法と改良型Slanted-edge測定法のMTF測定値の比較が可能
  • ●カメラノイズの測定
  • ●種々のカメラインターフェイスに対応
    •  ・ 放送用カメラなどで使用されるSDI入力に対応 ※IP-8030のみ対応
    •  ・ ミラーレスカメラなどで使用されるHDMI入力に対応 ※IP-8030のみ対応
    •  ・ マシンビジョン規格(CoaXPress/USB3 Vision/GigE Vision)に対応
  • ●カメラ・レンズデータ解析(ARRI LDS / SMPTE RDD18 / GenICam)
  • ●ワークステーションの他にも、ノートPCやタブレットPCでの測定に対応

 *Thunderbolt3に対応した外付けボックスを使用

測定結果の表示

本装置は下記文章に記載されているSlanted-edge測定法をベースにした測定アルゴリズムを採用しています。
 ・ISO Standard 12233、"Photography-Electronic Still Picture Cameras-Resolution Measurements," 2000.
  ・ARIB TR-B41テレビジョンカメラシステムの解像度特性測定法 1.0版

オプション

 

型名 製品名
OP-4030-1 チャート架台(チャートフォルダー+三脚)
OP-4030-2 MTFチャート/チャート架台用ケース
OP-4030-3 水平垂直共用チャート ※反射型
OP-4030-4  多方向エッジチャート(羽数 16)※反射型
OP-4030-5  多方向エッジチャート(羽数14)※反射型
OP-4030-6 チャートフォルダー
OP-4030-7 水平垂直共用チャート ※小型透過型
OP-4030-8 多方向エッジチャート(羽数 16)※小型透過型

 

MTFとは

MTF (Modulation Transfer Function)は日本語で変調伝達関数ですが、
空間周波数特性という別名の方が分かりやすいと思います。
要は、カメラで画像を撮るとき、どれぐらいの解像度で絵が撮れるか、を数値で表したものです。

MTFは、たとえば被写体に白と黒の縞模様をもってきて、
その縞のピッチ(間隔)を荒いものから細かいものまでいろいろ用意して、
それをカメラで画像にしたとき、画像のコントラストが縞のピッチに応じてどれぐらいになるかを示したグラフです。
横軸は、空間周波数(cycles/mm)で、縦軸はコントラスト比(0.0から1.0)です。
cycles/mmは、白と黒のペアが、撮像板上で1mmの中に入ったときに1 cycles/mmです。

MTFは、純アナログのフィルムカメラのころ、もともとレンズの解像度特性を表わすために使われていました。
レンズはその作りによって、被写体の模様が細かいほど、像がぼけてコントラストが落ちます。
したがってレンズのMTF特性を描くと、0 cycles/mm(直流)の1.0から始まって、周波数が高くなるほど
だらだらと曲線を描いてコントラストが落ちて行きます。このグラフを見れば、そのレンズが、たとえば、
2K、4K、8Kといったカメラの撮像面で必要とされる応答を満足しているかどうか分かります。

ちなみに、フィルム時代のMTFは、30 cycles/mmにおける応答が目安になっていました。
銀塩フィルムの粒子ピッチがそのあたりに相当したからです。
ところが、昨今の、たとえば8K撮像板になると画素ピッチがさらに上がるので、
昔の基準よりシビアになっており、フィルム時代のままのMTFではきちんと解像度を語れません。
また、現在ではMTFはレンズだけの話でなく、デジタルカメラとしてカメラ本体の様々な機構を含んだ
総合的なMTFとしても使われています。MTFを見ることで、その撮像システムが全体として、要求される
解像度をどれぐらい満足しているかを直読できます。

アストロデザインでは、日本放送協会様の協力のもと、リアルタイムMTF測定装置を開発しました。
従来のようにさまざまなピッチの縞模様を印刷したテストチャートを決まった画角で撮影する測定法と異なり、
白と黒のエッジを含むチャートを撮影し、任意の方向のエッジ応答からMTFを求める改良型Slanted-edge測定法
を使っています。そのため、レンズのズームを変えてさまざまな画角で撮影しながら、
それぞれの焦点距離におけるMTFをPCモニタ上のグラフでリアルタイムに直読できます。

このように本装置は、従来のように画角の設定がシビアで焦点距離や撮影距離が固定される制約がなく、
カメラ、レンズの開発や撮影現場など、様々なシーンで解像度特性を簡単かつ正確にチェックすることができます。

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