ASTRO JOURNAL vol.161
NHK技研公開2026レポート 最終回 Web版

 

アストロデザイン メールマガジン読者の皆様、

アストロデザイン 企画・マーケティング戦略部門の古瀬(ふるせ)です。

いつもメルマガをご愛読いただき、ありがとうございます。

5/28(木)~31(日)の日程で、今年もNHK技研公開2026が行われました。
今回は、技研公開レポートの最終回です。【NHKでこんなこともやってるの! Part.3】として、私が個人的に気になった展示をお送りします。

今年は技研公開だけではなく、各地の放送局の技術の方も関わっている「NHK TECH EXPO」との共催、あるいは同時開催の形になっていましたので、今回はNHK TECH EXPOを中心にご紹介いたします。何らかの形で、みなさまのお役に立てれば幸いです。

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NHK 技研公開ホームページ
https://www.nhk.or.jp/strl/open2026/index.html

NHK TECH EXPO ホームページ
https://www.nhk.or.jp/techexpo/index.html

 

NHK TECH EXPO について

NHKさんのHPによると、「NHK TECH EXPOは、放送現場ならではのアイデアや創意工夫から生まれた機材、放送・デジタル・視聴者サービスの手法など、技術の取り組みを幅広く紹介する」というものだそうです。

そして、今年のNHK TECH EXPOのテーマは、「つながる知恵、ひろがる技術」というものとのこと。

個人的には、「今現在、放送の現場でどんな技術が使われているか?」という事を垣間見れて、非常に興味深い企画だと思っています。昨年は渋谷のNHK放送センターで行われていましたが、今年は「技研公開とTECH EXPOがまとめて一か所で見られる」のは嬉しいですね。

今回は、下記の4テーマをピックアップしてご紹介します。

AI搭載自律型ロボカメ
エッジAIで映像解析 自ら考え制御するロボットカメラへ

河川監視カメラ自動収録システム
氾濫の危険を見逃さない! 収録を自動化!

8K深海撮影システム
深海の未知の領域を高精細な映像で記録

フォーカスアシストシステム
カメラマンの心強いアシスタント

私の興味のある分野(カメラ・撮影系)に偏っているのはご容赦ください。でも、ニュースやNHKスペシャル(以下、Nスペ)で見た「衝撃の映像」がどんな仕組みで撮影されているのかとか、いわゆる「Behind the Screens」を紹介して頂けるのは、視聴者視点でも興味深いところです。

あとはAIを使った「省人化」と「迅速性」。昨年から盛り上がっているAIが、NHKの映像制作・報道の現場でどのように活用されているかをご紹介したいと思います。

A)展示1 AI搭載自立型ロボカメ
(エッジAIで映像解析 自ら考え制御するロボットカメラへ)

これはいわゆる「エッジAIを搭載したカメラ」なのですが、今回の展示はNVIDIAのデスクトップAIスパコン「DGX Spark」を使っていたところが目新しい展示でした。
エッジAIロボカメって、語感から「AIチップを搭載した……」と考えがちなのですが、今回は汎用のPTZカメラと外部制御のAIスパコン(DGX Spark)を使っていたところが、改めて「なるほど、そうだよな」と思ったところ。
4月の国際放送機器展NAB2026でも、いろんなところでDGX活用を見かけましたが、「DGXでリアルタイムAI映像解析ってトレンド」になっていました。 NHKさん、アンテナ高いですねー。
技術的にも、経済合理性(汎用性)の視点でも「誰が考えても正しいアプローチ」です。「開発パートナーがソフトバンクさん」というのもあるのかもしれませんが、対応が早い!

今回の展示では、「情報カメラ(いわゆるお天気カメラやPTZカメラ)が、AIで自律的にイベント(アクシデント等)を見つけて記録する」という展示でした。
お天気カメラ(情報カメラ)には、事故とか災害とか火事とか、今までは「いつの間にか記録されている→後から探す」というワークフローでした。
これが、「何かあった時にAIがリアルタイムにそれを見つける」
「必要に応じてAIが判断してPTZカメラを制御してクローズアップする」

というワークフローへの改善ですから、利便性は非常に高いと思われます。
NHKさんは、お天気カメラ(情報カメラ)をたくさんお持ちですので、今後の展開が楽しみです。

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B)展示2 河川監視カメラ自動収録システム
(氾濫の危険を見逃さない! 収録を自動化!)

こちらは新潟放送局さんの展示。 国交省の河川監視カメラと、河川水位情報を自前で解析して、氾濫の危険性を自動で分析・判断し、該当する「河川監視カメラ」の映像を自動で収録する、というシステムです。

まさに、「現場での省人化」と「リアルタイムの迅速報道」の実現です。この原稿を書いているのは6/3の午前中、まさに「台風6号が東京を直撃」している時間帯なのですが、原稿を書きながら「神田川の氾濫情報(河川カメラ)」をチラ見しています。

でも、「河川カメラ」って言っても上流から下流までいろいろありますし、常に見続ける事は困難。
しかも「画像解析」とかではなく、「河川水位情報連動」という所が◎。こういう仕組みでリアルタイムに映像情報を提供してもらえるのはありがたいです。早くNHK防災アプリとかと連動して欲しい展示(個人の感想)でした。

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C)展示3 8K深海撮影システム
(深海の未知の領域を高精細な映像で記録)

私も大好きで観てましたよ、Nスぺの「ディープオーシャン」シリーズ。
 
深海の映像を8K記録って、これこそ「Power of 8K」の真骨頂
です。
今回は番組の事例として「幻のシーラカンス王国」「紅海:魔境の深海」を挙げていましたが、放送の映像そのものも、実にキレイで精緻でリアルな映像でした。シーラカンスの群れを生き生きと撮影、太古からつながる少し不気味なロマンを感じさせる映像でした。

今回の展示では、残念ながらアストロの8Kカメラではなかったのですが、展示としては「フルリモート8Kカメラ制御システム」「カメラハウジング」そして「補正レンズ」の展示をしていました。

私の個人的な注目は「補正レンズ」
水中撮影用のハウジングに入ったカメラは、海水やハウジングの境界面の屈折率で、映像の歪みがひどくなります。 NHKさんのチームでは、この歪みをキャンセルする「補正レンズ」を開発し実用化。そして番組で使用。
展示パネルには「深海用の高耐圧ドームポートによる映像の歪みに対し、専用の補正レンズを開発し、8Kクオリティの映像記録を実現」と書いてありましたが、番組はホントに良く出来ている映像でした。
展示パネルからすると、「三井光機製作所」さんが設計・製造したようです。三井光機さんは水中プロクサーレンズ(接写レンズ)がお得意ですので、たぶんそうなのでしょう。素晴らしい技術力です。(個人の見解)

ここは、NHKメディア技術局 コンテンツテクノロジーセンターさんの展示でした。

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D)展示4 フォーカスアシストシステム
(カメラマンの心強いアシスタント)

みなさん、「フォーカスマン」って仕事をご存じでしょうか? 映画のようなフォーカス(いわゆるピント)にシビアな現場って、「フォーカスマン」と呼ばれる「ピント合わせ専門技術者」がいらっしゃるんです。

もちろんスマホやデジカメにも搭載されている「オートフォーカス」という技術はあるのですが、「画面のどこにピントを合わせるか?」というのは、映像制作の基本のキ。画面に映っている対象物のどこに(何に)ピントを合わせるかによって、映像から伝わるメッセージも物語も変わってきます。

「フォーカスマン」は、カメラマン(撮影監督、キャメラマン)の制作意図に沿って、対象物までの距離を測って、カメラのピントを合わせるという映像制作現場のプロの技術者です。

それを「自動化しよう」という取り組みがコレ。いろいろたくさんあるパラメーターを、リアルタイムに、かつどのように取捨選択するかを、いろいろと工夫されていました。自動運転にも使われる測距装置の「LiDAR」を使ったり、オブジェクト(対象物)を認識してどこにピントを合わせるか、とかの表示/提示の仕組みとかも提示。

まだ手作り感のあるシステム展示ですが、こういった「現場の工夫」が、映像制作の進歩を促すんですよね。
こういう「現場起点での映像制作へのこだわりと進歩」、痺れます。(個人の意見)

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【まとめ】

最終回の今回は、「NHK TECH EXPO」を中心にレポートしました。NHKの技術開発って、技研だけではなく、地方局も含めた現場の局員の方々、制作の方々も取り組んでいらっしゃるんです。こういう機会に、現場の取り組みをご紹介して頂けるのって嬉しいですね。

ここでご紹介できなかったテーマも含め、ことしはやはり「AI活用」が多かった印象です。世間でも昨年から「AI」がキーワード(バズワード?)になっていますが、NHK TECH EXPOで「放送の現場でのAI活用」が見られたのは驚きでした。「AIに出来るのは分かっている」というのと、「実際にAIをNHKが放送の現場で使っている」というのは意味が異なります。 AIにはまだいろいろな所で「ハルシネーション」と呼ばれる「もっともらしい誤り」がありますが、その今のAIが抱えるリスクを踏まえ、乗り越えて、正確性と迅速性、そして省人化にチャレンジしているのだと受け止めました。(個人の意見)

そして、NHKの現場の方々の「映像のクオリティに対するこだわり」にも感動です。

スマホのカメラが高品質になり、「手軽に高画質」が手に入るようになっても、「プロが作った高画質」は違うんですよね。私自身、以前は映画の仕事に携わっていた事もあって「高画質ヲタク」の気質があるのかもしれませんが、高画質の利点として「見えなかったものまで見える」「空気感まで伝える」という点は、みなさんもご経験があるかと思います。
こういったNHKの映像制作の現場でのそのこだわり、これからも大切にして頂きたいな、と思いました。

4回にわたって「NHK技研公開2026」「NHK TECH EXPO」をご紹介して参りましたが、長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。

できるだけ迅速にお届けするための「書いて出し」なので、乱筆乱文はご容赦ください。また、本メルマガでご紹介している技術の理解に誤解がございましたら、私まで直接ご指摘を頂ければ幸いです。

2026年6月5日 古瀬(ふるせ)

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このNHK技研公開レポートに、ご意見・ご質問のある方は、古瀬まで直接ご連絡ください。

Mail : furuse-hiroyasu@astrodesign.co.jp

古瀬/アストロデザイン(株) 企画・マーケティング戦略部門 管掌 執行役員
LinkedIn : www.linkedin.com/in/hiroyasu-furuse-32925135

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